Business 2022.03.11

「慎重かつ大胆に」 中国市場での成功をサポートする XP(クロスプラットフォーム)事業の最前線について聞いてみました

クロスプラットフォーム事業部で中国を中心とした越境EC業務に携わっている劉青さん。
ブランディアTmall Global海外旗艦店でのプロモーションやマーケティング、日本発ブランドやIPのECの店舗運用など中国の越境EC事業のスペシャリストとしての経験を活かして活躍中です。中国での越境EC成功の秘訣を「中国への理解」と語る劉青さんに、中国と日本のEC事情の違いや越境EC事業を主軸とするBEENOSへジョインした経緯とBEENOSならではの特色などを伺いました。

 

事業に誇りを持つ姿が印象に。熱意に押されて入社を決意。


―これまでの経歴を教えてください。

劉青:初めての転職でBEENOSに来ましたが、前職では2010年からECを中心とした業務に携わっており、中国に5年間赴任していました。今の仕事とそんなに差はないですね。前職ではプロモーション、デジタルマーケティングの仕事に2,3年従事し、日本のお客様向けに中華圏の広告出稿などを行っていました。その後大規模な越境ECプロジェクトの立ち上げメンバーとなり、唯一の中国人としてコミュニケーションや通訳の場面で多岐に渡る経験をさせていただきました。同時に6種類のブランドを中国に一気に進出させるプロジェクトに関わりましたが調整やコミュニケーションをタイトなスケジュールの中、いかに期限を守って遂行できるかという点が大変でした。中国と日本では全然感覚が違うので、そういった経験をしている点はほかの人に負けないと思います(笑)。

ゲームのアプリの開発にも関わり、中国の子会社のメンバーを日本に招いて開発を行っていましたが、その後、中国に赴任する話をいただいて。自社の越境ECの出店立ち上げをして売り上げを伸ばしていたところ、中国の子会社の社長から声をかけていただき中国の子会社の越境EC部門を担当することに。後に副総監として抜擢されました。現地のEC部門の統括として、日本をはじめとする様々な企業様の現地ECショップや越境ECショップを一括して担当することになり、5年間務めました。

―やはり以前の業務経験が今活きていますか?

劉青:そうですね。今までの経験があったからこそ、BEENOSに入社して自分の強みや良いところを活かせているのだと思います。

―BEENOSに入社したきっかけは?

劉青:出産のために日本へ戻りその後日本で業務に復帰したんですが以前とは仕事の内容が変わったんです。同じ部署ではあるんですが、経営管理の仕事…つまりバックオフィスの仕事に配属になりました。会社はどういう風に成り立っているのかを知ることができ、仕組みを作ったりと面白かったんですが、ただスピード感があまりなかったんです。1か月や2か月、1年2年で終わるような仕事ではないので、今まで中国で経験してきたスピード感とは全然違う感覚でした。当時はもどかしい自分と戦っているような時期で、良くも悪くも忙しいのが自分にはいいのかなと考えるようになりました。充実はしていたんですが、スピード感がないところにやりがいをあまり感じられていませんでした。そこでもう少しスピード感のある仕事がしたくて、自分の経験が活かせる仕事を探し始めたんです。ちょうどBEENOSの求人が出ていてご縁があり入社に至りました。
他社にも内定をいただいて、すごく悩んでいたんですけど(笑)。決め手はBEENOS内定後の食事会に招かれたことでした。そこで現場の雰囲気がすごくいいなと感じて、真摯に中国の事業がしたいんだという熱意が伝わってきました。人柄やみなさんの熱意に押されてBEENOSに入社を決意しました。自分のやりたいこと、自分に合う環境、自分が働きたいと思うかどうかがより大事だったんです。BEENOSは社員が輝いて見えたんです。自分がやっている仕事に対して誇りを持っているような感じがして、印象的でした。BEENOSに入って自分もこんな風に輝きたいなというのが当時の心境でした。
 

中国市場を中心に越境ECの店舗運用に深く関わる


―入社してからはどんな仕事をされていますか?

劉青:今はブランディアのTmall Global海外旗艦店や日本発IPコンテンツやライセンスなどの越境ECを担当しています。ブランディアではプロモーションやマーケティングなど店舗運用に関わっています。

―それぞれどのような目標を掲げていますか?

劉青:ブランディアは第一に売上ですね。世界各国で展開していて、昨年から中国の市場にも参入していますし、どんどん売上を立てていかないといけないですね。中国の中古ブランド市場はとても大きく、2020年には175億元の規模感になっています。現在はコロナ禍で海外に行けないですし、店舗でブランド品を買うと高額です。その結果消費者心理が中古の状態のいいものを安く手に入れたいという風に変わっています。リユース品についてのユーザーの意識も、これまでの古い、誰かに使われたものという印象から環境に優しいなど、若者を中心に認識が変わりつつあります。私たちはその時流に乗ってどんどん日本のいい商品を中国で展開していきます。

日本の中古ブランド品は丁寧に使われていますし、バッグも日本限定のものだったりと豊富にあります。中国は偽物を買ってしまうリスクがまだありますが、日本だと偽物が少ないんです。また、ネットで商品を見て本当に同じものが届くかはわからないという不安ってあるじゃないですか。その不安やハードルをどう超えて買っていただくかですよね。数万から数百万円する商品ですし、安心して頂けるような店舗づくりをしなくてはいけないですし、リスクについても学習しなくてはいけません。旗艦店では中国人にとっての人気商品を一部専用して出品しています。

IPやコンテンツの越境ECは数字も大事ですが、世界観を維持しながら販売していくことが重視されます。普通の小売りの感覚ではないですね。モノを売ればいいという世界ではないんです。そこは今までと全然違うところですね。商品もどんどん新しいものを出していて、商品づくりに対する考え方が一般の会社とは違うんですよ。そのおもしろさをファンの方に感じていただくんです。

―クライアント案件なので、いかに理解するかが大切なんでしょうね

劉青:理解しないと信頼関係も築けませんし、十分に理解をしたうえでどうやったらブランドあるいはコンテンツやキャラクターを中国の人たちに好きになってもらえるか。そういうことを第一に考える必要があります。人気商品は売れば売るほど売れるので、売り上げをたてやすいですが、そうではなくてどれだけ好きになってもらえるかを大事に考えているんです。商品もサービス品質もとても重視しているし、そういった点のオペレーターへの教育もしっかりして日本クオリティのサービスを提供できるように準備しています。
 

スピード感と投資タイミングの見極めが重要


―中国マーケットと日本マーケットの違いを教えてください。また、難しいところは何ですか?

劉青:一消費者としてびっくりしたのですが、たとえば日本の有名家具店で買い物をしたんですけど配送日が数か月先だったんです。物流とスピード感が中国とは全然違うんです。中国だとあり得ないことです。朝ネットで商品を買うと早くて午後には届きますから。あんなに広い中国でですよ。それくらいのスピードを想定してみんなネットで買い物をしていますね。

―今必要だからネットで買う、ということですか?

劉青:そうです。ネットスーパーみたいな感覚ですね。食材を朝買ったら午後には届くという。そういう感覚でECを利用していて、日本とは違いますね。そのスピード感に追いつくかどうかというところですよね。そもそも中国のECはこういうものだということを理解しないと日本企業が進出していても失敗してしまうことがあると思います。越境ECの場合は海外から商品が届くのでもう少し長いスパンで見ないといけませんが、中国の消費者はそういったスピードに慣れているので待つことが出来る環境じゃないと理解する必要がありますね。いかに早く出荷して届けるかがひとつのポイントだと思います。

もう一つはサービスの品質・判断のスピードですね。中国ではチャットの問い合わせに対して素早くレスポンスが返ってくるんです。基本30秒以内に返信しているんです。メールを送って翌日に返信、というレベルではなくて問い合わせが来たら即反応。これまで中国に進出したい、商品を売りたいという日本企業さんを多数見てきましたが、「売れるかどうかわからないからとりあえず様子見しましょう」「今すぐに判断は難しいから社内稟議が必要」という企業がほとんどでした。要は売れるまでは投資しない、動かないんです。そこは逆なんですよね中国では。中国は投資してから成功するパターンが多いですし、判断も早いです。そうしないと成功はなかなか難しいですね、様子見で成功するかは宝くじが当たる確率並みになります。

BEENOSでは、ブランディアに対して開店して間もない時期に社長からプロモーション予算の承認を頂いて。これからというときに投資をしてくれる、会社のスケールの大きさにびっくりしました。そこに対しての感覚は中国に合っていると感じました。 

―ほかの中国籍の社員の方もBEENOSや直井さんについて話が早くてグローバルで仕事がしやすいと言っていました。日本企業はたいてい渋るのにと。

劉青:中国は市場の変化が速いので、今この決断をしないと遅いとかあるんです。そういうのは日本の企業だと追いつかなかったりするんです。もう少し考えさせてよ、稟議を通さなくちゃ、とか。でも稟議を通すためには数か月かかるし、その時にはもう遅いんです。
 

リスクのある試みを後押しした直井社長の言葉


―スピード感が一番大きいところですね。

劉青:そうですね。直井さんに報告したときの言葉が印象的でした。
「慎重かつ大胆に」。とあるIPのことですが、人気商品の在庫不足が長期化し、クライアントとしても在庫を日本国内優先、常に新商品を出すため多く作らないというスタンスでいるため、安定した在庫供給が一大課題でした。そこで社長に人気商品を事前に買取し確保したいという提案をしたところ、「慎重かつ大胆にやっていいよ」と言われたんです。在庫リスクを抱えるので、私の中では慎重のほうが8割くらいだったんですが、売れるのに数が足りないということもあるのでそこは大胆にやっていいよと言われて、その権限をいただけたのがとても助かりました。うれしかったです。社長からそんな後押しをしてもらえることってなかなかないんじゃないでしょうか。

―クライアントの商品を売ることも遂行しながら、在庫を抱えるということを考えながらやるというのはなかなか大変ですね。

劉青:そこはお客様のものを売ってあげるというような感覚ではないですね。一緒になってどんどんファンを作ってブランドを好きになってもらい、その結果が売り上げにつながる。それが一番ベストな状態ですね。

―そこから作れる環境はあるということですね

劉青:
そうですね。会社としてそこのリスクを支えてくれる、大胆にやっていいよという権限をいただけるというのは現場としてはとてもやりやすいしやりがいを感じますね。ただ指示を受けてはいやります、ではなくて自分たちでいろいろなことを考えて提案して会社から許可をもらう、そこのサポートが現場のやりがいにつながると思います。私はこういう環境が一番好きですね。
 

現場を信用して仕事を任せてくれ、挑戦の結果が正当に評価される


―BEENOSだからできることや、他社との違いがあれば教えてください

劉青:
多分BEENOSという会社は上下関係とか組織という感覚がいい意味で薄い部分がありますね。上司の顔を伺いながら「これをしていいのか」と悩んだりするのはあまり良くないと思うんですよ。本来、日本人なのでそこまで中国のことを理解していない部分があるかと思います。そこは現場で見てきた私たちが一番わかっているので、そこを信用してやらせてくれるというのがBEENOSだと思いますね。その代わり責任を持たないといけない。ただやるのではなくてやった結果をきちんとコミットメントしなくてはいません。そういった面白さがBEENOSにはあります。どんどん自分たちで考えて挑戦して結果を残して会社から正当に評価されるのはBEENOSの良さですね。逆に組織の中で決まった仕事をやるようなタイプの人は合わないかもしれません。


―劉青さんは受け持っているプロジェクトも大きいですが、先ほどの直井さんの例もあって働きやすいのではないでしょうか?

劉青:働きやすさというとほんとにそうですね。実は家庭の事情で去年9月から3か月間ニューヨークで仕事してたんです。そういうのも普通の会社だったらありえないなと思っています(笑)。ニューヨーク行ってきていいですか?いいよ、という感じで(笑)そんなすんなり許してくれる会社ほとんどないと思うんです。社員の生活や置かれている状況を理解してサポートしてくれる会社だなと思いましたね。私は2歳の子供がいるんですが、働くママとしても働きやすいなあと思っています。仕事の時間にあまりとらわれない、私は裁量性だからかもしれないんですけど。仕事をちゃんとやれば何時から何時まで必ず仕事をしてくださいとかそういう縛りもないし、自分のペースで働けます。そういうところは本当に助かります。その分自分ももっと頑張らなきゃという気持ちにさせてくれます。

―チームワークというか、この人たちがいるから大丈夫というのは大きいかもしれませんね。

劉青:
そうですね。プロジェクトをやっているうえで私がいなくても大丈夫だという構成や状況を作り出すことも大事だと思います。安定した運用をするためにも。そこはチームワークやお互いの信頼関係がベースにあるかなと思います。みんな責任感が強いメンバーたちなのでちゃんと仕事は最後までやりきる、できないときは「ここはよろしく」と引き継げるんです。穴をあけるようなことはしないメンバーたちなのでお互いに信用しています。

ーチームメンバーもスピード感をもって全体を見れる人たちが集まっているんですね。

劉青:
そうですね。メンバー規模はあまり大きくはないんですがこのメンバーで本当に一生懸命やっています。

―ハードな業務というイメージですがどうでしょう

劉青:
中国のECはそんな感じです。決まった9時から5時という感覚で仕事をしているわけではなくて。ECは夜中でも24時間営業しているじゃないですか、いつ何があるのかわからないのがECの世界です。ただ自分たちも人間なので24時間仕事ができるわけじゃないので、働いていない時間でも安定して運用できるように日々準備をしています。

―日本人から見ると日本のECは成熟しているように思えますが、中国のEC事情を伺ってまだまだ進化の余地があるように感じました。ECの在り方も結構違うんですね。

劉青:
今コロナ禍というのもあってよりECが身近な存在になっている部分がありますね。スーパーで買い物するのとネットで買い物するのと同じような感覚にどんどん近づいてると思うんですけど、ただまだスピード感やサービスの質、返品事情だったり改善余地がありますね。日本はまず買ってもらいやすい環境づくりをしなくてはいけないと思います。
 

現場のプロとして日本企業の中国市場での成功をサポートしていきたい


―今後個人として目指していることについて教えてください。

劉青:
いろんな企業様を見てきましたが、最終的に成功する企業様は中国のことをよく知って勉強していて、かつサポートする現場の我々のことを仲間だと思ってくれています。私もそういった企業様をより増やしていきたいです。中国のマーケットにもっと日本の企業様に来てもらって、中国は遠い存在でなく現場の私たちもいるので手が届くということを知っていただきたい。私たちも仲間としてやっていける企業様をどんどん増やしていきたいです。そこが私のやりがいです。日本の良い商品がたくさんある中でもっと中国の消費者に知ってもらいたい。そういう部分で役に立てたら嬉しく思います。

―チームとしては今後何を目指していますか

劉青:
今後チームは拡大していくんですが、みんなが一人前になって私がいなくても大丈夫という感じになってほしいです。今はまだ新卒の人もいますし、日本語でのコミュニケーションや仕事の考え方も一から教えている段階です。今後みんなが一人前になって店舗を一人で任せても大丈夫というレベルまで成長してほしいと思います。そこは私のミッションでもありますね。BEENOSにもそういった人材を増やして、いろんなプロジェクトに入ったときみんなができるような構成になっていればいいなと思います。

―これから新しいフェーズに進んでいくと思いますがいかがですか

劉青:
どんどん新しいプロジェクトも入ってくると思いますが、まず今のプロジェクトを成功させないとですね。まず今行っているプロジェクトをBEENOSの大きな成功事例として世に出したいです。

―ありがとうございました!

Profile プロフィール

 
劉 青 Qing Liu
2003年に来日し、大学院を経て前職で日系企業のアジア進出サポートや大手グループの中国越境EC進出プロジェクトに参画。5年間の中国赴任を経験し、中国現地で日系企業の中国EC進出やEC店舗の運用マネージメントに従事。
日本帰国後、グローバル経営管理業務を経て、2021年にBEENOSに入社。自社ブランドBrandearのTmall国際旗艦店の運営&マーケティングと日本のコンテンツやブランドのTmall国際旗艦店の全般運営を担当。