Business 2022.03.02

ダイナミックプライシングを推進するメトロエンジンへ出向 出資先での刺激的な日々について 若手データサイエンティストとCOO小阪さんに聞いてみた

BEENOSでクロスプラットフォーム事業を経験し、システムの構築やマーケティング施策、経営にかかわってきた入江。更なる成長の機会としてBEENOSの出資先であるメトロエンジンへの出向について声がかかり、BEENOSでの経験を礎に新たなチャレンジをするべくメトロエンジンへ飛び込みました。今回はメトロエンジン取締役COOである小阪さんと入江にメトロエンジンという環境や注力領域、現フェーズの面白さなどを伺いました。刺激的な出向キャリアにもご注目ください!
 

メトロエンジンへの出向は、不安半分嬉しさ半分

 
ーメトロエンジンの概要と小阪さんのキャリアについて、まずはお伺いしても良いでしょうか。
 
小阪さん:
メトロエンジンはダイナミックプライシング事業をやっています。2016年に創業して最初はホテル向けにSaaS型のダイナミックプライシングのサービスを提供して、ここ2年ほどでホテル以外の業界にもダイナミックプライシング事業を横展開しています。ホテル以外ではレンタカー、フードデリバリーの業界に展開しています。僕は2019年の1月からメトロエンジンに参画し、取締役COOとチーフデータサイエンティストを兼任しているんですけどその前はアメリカに留学してMBA取得したり、コンサルでデータサイエンティストとしてデータを使ったモデリング、アナリティクスベースのコンサルティングをしていました。
 
ーメトロエンジンへの出向を命じられた際はどんな印象を持ちましたか?
 
入江:
率直には不安半分嬉しさ半分でした。不安は新しいことに対する純粋な不安です。打診された時の内容がBEENOSからメトロエンジンへ行って、メトロエンジンの成長に貢献することでメトロエンジンのIPOにつながる。BEENOSとしても黎明期より出資をしてきたパートナーであるためすごく大きな任務があるなと。自分にその役割が果たせるのかなという気持ちがありました。実際社内の誰も体験したことのないポジションで、ある種大役に感じている部分もありました。ただ嬉しさが最後勝ちましたね。僕に任せてくれるんだと。社内には僕よりもキャリアのある人が沢山いるなかで僕を選んでもらえたというのは嬉しかったです。小規模かもしれませんがBEENOSで過ごした数年の成功体験が後押ししてくれました。最後はこのチャンスを逃すのはもったいないと思うようになり、メトロエンジンへ行こうと決めました。
 

 
ー出向の経緯を教えてください。 
 
入江:BEENOS代表の直井さんから打診がありました。僕のBEENOSでの2年半の立ち回りを見てくださって、次のチャレンジをしてみないかと。2年半前の当初僕が携わっていた事業はまだ部署という単位で確立してはおらず、新規事業をチーム3人でやっていたんです。事業内容はデータに基づいて国ごとの需要と供給のギャップに着目して、ビジネスにできないかというものでした。供給量の多い国は安く仕入れられますし、需要の高い国には高く売れます。そういった需給や価格のデータを世界中のマーケットから取ってきて、安く仕入れられる国や高く売れる国を調べたり、いろいろ調査していました。供給側の企業と密接に結びついてディスカウントで仕入れたり、マーケットプレイス側にはいい企業を連れてくるからいい露出枠獲得させてくださいと交渉したり。海外の大規模マーケットプレイスのユーザが日本の大規模マーケットプレイス上の販売商品を買えるようにプラットフォーム同士を直接連携する、クロスプラットフォームという構想のもと、商品を欲しい国に対して供給のある国から渡していくという事業に携わっていました。立ち回りとしてはシステムやオペレーションの構築をゼロから行っていました。ほかにもマーケティング施策としてマーケットプレイス側でどんなキャンペーンを打ったらユーザに喜んでもらえるか、どういう風に商品構成を入れ替えれば売り上げが増えるかなどを調査したりもしていました。後々には経営の部分で売り上げ予算を設計して日本の企業がどれだけ商品を流通させていきたいか、マーケットプレイス側もどれぐらいの金額を達成したいかなどをみんなで話し合っていました。事業の規模が拡大するにつれてメンバーも拡充し、当初3人だったメンバーが今は10名ほどに増えて大所帯になっています。最後は部下のマネジメントもさせてもらっていました。数字としてもクロスプラットフォーム部署は大きくなり、そこに至るまでの立ち回りを見てくださって直井さんから出向の打診がありました。 

ー直井さんからの打診があった際、メトロエンジンとしてはどうでしたか?
 
小阪さん:
入江君の出向が決まったのはちょうどメトロエンジンが人材を探していたときでした。株主の会社さんにも人手が足りないので手伝ってくれる人をアサインしてくれないかと相談していたタイミングでした。BEENOSさんにもお願いできるかなと考えていたらお話をいただきました。
どんな人なのかな?と当初はバックグランドだけ聞いていて、そのあと面談をさせてもらって「いいの?優秀そうな彼がメトロエンジンに来てもらえるなんて願ったりかなったり」と思いました。入江君について「BEENOSにこんなひとがいるんだ」という驚きがありました。優秀な人ばかりというのは知ってたんですけど、入江君はすごくキラキラしているんですよ。一時間だけ面談で話して、高いパフォーマンスを出してくれそうな感触はその時からありました。早く来てくれないかなと思っていたら本当に早く来てくれました。
 

ダイナミックプライシング推進に携わり企業への提案や学習に奔走

 
ー入江さんメトロエンジンに出向して実際どうでしたか?
 
入江:
最初はキャッチアップが大変でした。多岐にわたる業界にダイナミックプライシングを含めDXを推進していくんですが、本当に様々な業界からお話が来ていました。一次産業の人手作業をIoTやデータで効率化できないか、サプライチェーンの過程で業者同士がFAXや電話でやりとりしている非効率な部分をプラットフォーム上のボタン一つで効率化できないかなど、様々な相談が来るんです。とにかく専門分野の知識がとても難しいんです。取引先が大量にあって、人名を把握することも大変ですし、ダイナミックプライシングに関するデータサイエンス領域の論文を読んで、どういう構造でモデリングしているのかを学習していました。最近は法人営業の提案書を作っているんですがお客様と打ち合わせしながら金額感や納期を釣り合わせたり、提案書以外のところでお手伝いできないかを模索したりと、BEENOSでは経験してこなかったようなところを経験できています。キャッチアップが大変な反面いろんなことを任せてくれているので、充実しています。
 
BEENOSも、初日の出勤先はBEENOSのオフィスではなく商談先でした。メトロエンジンでも3日目にしてそれぞれ全然違う領域の外部企業との商談が3件入っていたんです。小阪さんと同席しながらの商談だったんですが、僕のことをすごい売り込んでくださるんですよ。そういった商談を含め色々任せてくれてすごく楽しいですね。2月で5か月目になるんですが、最初は幅広い業界を経験させてもらいつつ現在は担当領域が絞れて来ています。法人営業ではつい最近数千万単位の案件を受注するなど、少しずつ企業のお手伝いができているんじゃないかなと思います。他にもレンタカーのダイナミックプライシングについてプレスリリースを出したり新聞に掲載されたり、トライアルで導入してくれている企業の事例などを記事化して公開していますが、多くの反響がありました。世の中にも見てもらえるし社内としても注目のプロジェクトに参加できていて日々色んな情報・体験が新しく更新されていくので刺激を受けています。
 

 役員との距離感が近く、自分からアクションを起こすと立ち回りやすい環境がBEENOSとメトロエンジンは似ている
 
ーBEENOSとメトロエンジンでは環境が違ったんじゃないですか
 
入江:
メトロエンジンに来た当初はどの業界にアサインするか、どういうメンバーと働くことになるかを選ぶような状態でしたので、当時は様々なMTGに参加しました。
BEENOSとは言語やメンバーが違いましたが、次第にBEENOSと似た環境だなと思うようになりました。例えば役員との距離が近くて、意思決定が早くスピーディーな事業展開ができることがBEENOSと近いと感じました。BEENOSでも直井さんと週一で進捗報告や相談をしていましたが、メトロエンジンでも小阪さんと近い距離で仕事をしていますし、社長の田中さんとも外部の商談で毎日顔を合わせたり、社内で田中さん、小阪さんと3人でMTGをやったりしながら詳細が次々と決まっていくんです。この金額で提案してみつつ、もっと交渉の余地を残してみようとか、そうした色んなことを相談しながら進めています。そうした場面でBEENOSでの経験が活かされています。
 
もっと広く言うと自分からアクションすると立ち回りやすい環境だと思います。例えばわからないことがあったら聞きまくるんです。そうすると皆さん親切に答えてくれる。わからないのに抱え込んでいると周りが手を差し伸べるのも難しいと思います。だから自分から発信することはすごくやっています。BEENOSでそれは身についていたと思います。メトロエンジンに出向した直後から企業と商談していましたが、服装どうしたらいいですかと小阪さんに相談したり、法人営業するので会社の携帯電話を注文してもらったんですが携帯受け取りましたと報告したり、そういう細かいことも自分から発信していっています。連絡が多くてやかましくないかなとも思ったんですが、報告が少ないよりは多くて困ることはないと言っていただいています。BEENOSもそういう雰囲気だなと、似てるんじゃないかと僕は思っています。
 

新規事業の立ち上げが同時並行でいくつも進む。世の中を巻き込んで新しいことをするメトロエンジンは面白い

 
ー今メトロで何に注力されていますか?
 
小阪さん:今入江君がやっている領域は大きく3つなんですが、既に売り上げを出している領域や、ポテンシャルを持っている領域です。会社として重要なところの大半を任せています。レンタカーのダイナミックプライシング(https://info.metroconductor.jp/)は今年の頭に日経新聞でも取り上げられて、今すごく大事なタイミングなんです。この開発は3年前からずっと取り組んでいて、ようやくこのタイミングで条件がそろってリリースを出すことが出来たんです。軒並み大手企業様と商談をさせてもらっている状態です。レンタカーのダイナミックプライシングはメトロエンジンにとって重要な領域で、入江君にその大事なところを担ってもらっているんですがメトロエンジンの命運を握っていると言っても過言ではありません。大手企業様とのやり取りは様々なことに気を遣うんですが、単なる営業であってもPM的なスキルも必要とされたり社内コミュニケーションも必要です。そこは大変だと思うんですがうまくやってくれていますね。 

ー様々な事業をやっていますよね。今のメトロエンジンはフェーズとして何が面白いですか?
 
小阪さん:
コロナの影響はネガティブなものでした。ホテル向けに展開しているサービスのお客様が大変な思いをしています。我々としてもコロナからネガティブな影響を受ける領域だけにサービス提供していくということはポートフォリオ的にもよくないということがあって、そこで一気に展開していく業界を広げていってるんです。今まさに手を広げて今までホテル向けに作り上げてきたものをさらに成長させていって、ホテル以外の業界に向けてプロダクト・サービスをこれからどう立ち上げていくか、新規事業の立ち上げポイントが同時並行でいくつも進んでいる状態です。入江君と僕がその新規事業の立ち上げを今一生懸命やっているという感じなんです。完全に人手不足。もっと任せられる人がいたら任せたいという状態です。結構カオスな状況ですが、自分で立ち上げていくことをやりたい人にとっては今のメトロエンジンはすごく面白いと思います。 
 
入江:僕にとっては新規事業をお客様と共につくっていくことですね。メトロエンジンのやっていることって誰もやったことがない新たな挑戦なんです。先ほど言った一次産業の件やレンタカーのダイナミックプライシングも今までになかったツールを作って、それをパートナー企業さんが使ってくれてフィードバックしてくれる。お客さんと共同でプロジェクトを行っている感じなんです。お客様がサービスを利用して「良かった」と言ってくれる、この反応を色んな他の想定顧客に広げていかなくてはいけません。企業様と一緒に進んでいくような気持ちがします。世の中を巻き込んで新たなことに挑戦する感覚を持てることがメトロエンジンで面白いと思う部分です。大手企業や技術を持っているスタートアップ企業など多くの人を巻き込んで新たなことを目指していくことを引き続き楽しんでいきます。
 
 

小阪さんからクライアントニーズに対してのコミュニケーションを学ぶ日々。出向の中で新たなキャリアが見えてきた

 
ー今後どうなりたいですか?小阪さんは、入江さんにとってどんな存在ですか?
 
入江:
今後なりたい姿は、相手の求めるニーズに対してそれに適切に応じるコミュニケーションが取れるようになりたいです。BEENOSの時は台湾や東南アジア、国をまたいだ人々のニーズをくみ取ることは結構難しかったんです。お客様から送料無料にしてほしいという声や金額を高くしても物流のスピードを速めてほしいという要望があり、そうしたいろんなニーズにこたえることは当時の僕にとって難しいことでした。メトロエンジンではお客様となりえる企業の内部で現場の人と意思決定者の課題感がそれぞれあって、現場の業務効率化をしたいとか、今現場の費用対効果を議論するよりも売り上げを伸ばす方向にしようだとか、むしろ事業を縮小しようかなという課題感もありえます。いくら良いプロダクトでも費用対効果の検討にならないような見積もりを出しては取り合ってもらえないんですね。企業によってそれぞれ違うニーズを持っているので。そこに対するコミュニケーションを上手になっていきたいです。
 
小阪さんにはプロダクトの提案のしかたや、コミュニケーションについてを教えていただいています。小阪さんは配慮のある人で尊敬しています。相手のニーズに寄り添った発言ができて、素晴らしいコミュニケーションを取られる方です。また、会議でも図表を書いてくださってイメージを湧きやすくしてくださったり、マトリックスで情報を整理して書き出してくださるなど、そういうコミュニケーションも得意です。左脳的な問題整理能力と人と寄り添える右脳力がすごいバランスのいい方だなと思います。僕は自分でいうのもおこがましいですが直井さんにはバランスが良いのが強みだと言っていただいています。小阪さんのいい部分を吸収していけたら、このバランスを高水準に保っていけるんじゃないかなと思っています。
 
 

大転びをするようなチャレンジをして器を広げ、もっと重要なポジションになっていってほしい

 
ー入江君にどんなことを期待していますか
 
小阪さん:
メトロエンジンに入社してほしいですね(笑)入江君は来て4か月とは思えないくらい濃密な時間を過ごしています。すでに数千万の受注に結び付く提案書を自分で作りあげるなど成果を出してくれています。さっき言ったようにレンタカーの事業がこれから伸びていくかはこのタイミングにかかっているんです。入江君にはそのあたりのパフォーマンスを引き続き期待しています。一方で入江君は26歳になったばかりで若いじゃないですか。メトロエンジン、BEENOS関係なく個人としてビッグになっていける人材だと思うので今のうちに怪我をしながらいろんなチャレンジしてほしいです。今既に軽い怪我は日々しながらPDCAを回しながらやっていると思うんです。でも、まだ多分大きな怪我はしてないんじゃないかな。そこで大転びするくらいのチャレンジをしてさらに器を広げていってくれたらと思います。今後半年後にはもっと重要なポジションになってもらいたいです。
 
ー小阪さんはどんな感じで指導してくれますか?
 
入江:
詳しく解説してくれます。物事の原理原則を絵に描いて丁寧に教えてくれるのでわかりやすいと思います。あと器が半端なくでかいです。これから怒られることも増えてくるかもしれないですけど、今はまだ見習いなので大転びはしないように色々細かいことを質問したり相談しまくっていますが、全て快く答えてくれます。そのうちできる幅が大きくなっていって、僕に意思決定を任せてもらう機会も増えるでしょうが、そういう段階で失敗できることも出てくるんじゃないかなと思います。小阪さんはそういうところも受け止めてくれると思っています。よく「心理的安全性」という言葉がありますが、任せてくれる実感がありつつも挑戦してもいいよという器の大きい感じがあります。やりたいようにやらせてくれて、見守ってくれている。そういう風に感じています。 
 

ダイナミックプライシングの先頭企業として世の中の変革を加速し、新たな挑戦を続けていく
 

ーメトロエンジンとして今後目指していくことはなんですか?
 
小阪さん:
ダイナミックプライシングは2019年くらいに国内で話題になって今はニュースでも鉄道料金やタクシー料金のダイナミックプライシング化が取り上げられています。インフラに近いところで固定価格が古い概念になろうとしていて、価格に変革が起きようとしているんです。メトロエンジンはダイナミックプライシングを提供する会社として先頭に立たせてもらっているんですが、まずは国内で変革を加速させていけるようにやっていきたいです。より抽象的に言うとメトロエンジンがやっていることって他のどの企業もやっていないことを先頭きってやっていくことなんですね。正解がないので難しさはあるんですけど。そもそも課題が何でどういうソリューションだったら誰が満足してくれるかを0ベースで考えていかなくてはならないんですが、そういうチャレンジをしていく会社でありたいと思っています。
 
 
ーありがとうございました!
 

Profile プロフィール

 
入江政行
2019年4月、東京大学卒業後、BEENOS株式会社に新卒入社。
大学時代はデータサイエンティストとして、ビッグデータ解析に従事。入社後は、新規事業のビジネスプランナーとして、アジア屈指のマーケットプレイス「Shopee」との業務提携プロジェクトリーダーを務める。2021年10月より出資先であるメトロエンジン株式会社に出向。
 
 
メトロエンジン株式会社 取締役COO 兼 チーフデータサイエンティスト
小阪 翔
2010年、大手化学メーカーに就職。国内営業/海外営業を経て、自ら企画した中国企業との提携による新規事業を立ち上げる。その後渡米し、2017年ミシガン大学Ross School of Business修了。MBA取得後は同大学院に研究員として残り、統計学と機械学習のビジネス活用を研究。帰国後は野村総合研究所でデータサイエンティストとして各種業界のコンサルティングに従事。2019年1月よりメトロエンジン入社。