Engineering 2023.11.24

アイデアと技術力を競う「グループ横断ビジネス職・クリエイティブ職混合アイデアハッカソン2023」の運営に聞く開催意義とこれから

 
アイデアの質とそれを実現する技術力で競う社内イベント「グループ横断ビジネス職・クリエイティブ職混合アイデアハッカソン2023(以下アイデアハッカソン)」が23年9月に開催されました。企画・運営を担当した釜坂(19年新卒/中央右)、内田(22年中途/中央左)、森田(22年新卒/左)、倉内(22年新卒/右)の4名にイベント立ち上げ時の背景や開催の意義、これからの展望を聞きました。

業務上の課題を皆で解決できればと企画


―アイデアハッカソンの概要について教えてください

釜坂:
「グループ横断ビジネス職・クリエイティブ職混合アイデアハッカソン2023」はアイデアソンとハッカソンをかけあわせたアイデアや技術力を社内で競うイベントです。少し長いですがこの名前は強いこだわりをもってつけました。今回の開催テーマは身近な業務改善です。仕事をしていると効率化できそうだと感じる業務が日常的にたくさんあると思うのですが、そういったものをアイデアハッカソンという枠を使って全社一丸となって改善していくことを目的としています。

―立ち上がった経緯を教えてください

釜坂:
僕は今年、tensoに配属された23年の新卒と一緒に6月から7月くらいまで全社を回って一緒に研修を受けていました。カスタマーサポートのチームに行ったり、tensoのオペレーションチームや倉庫に行って一緒に作業などをしました。その時の僕のミッションはAIでそれらの業務を効率化するということでした。でもAIを使わずともエンジニア視点で考えるとちょっとしたツールの開発やシステム改修などで効率化できる作業や業務がすごくたくさんあるなと思ったんです。ただ、僕一人ではすべての課題に取り組むことはできないので、周りを巻き込んでみんなで改善できればと考えたのが理由の一つです。また、コロナ禍の中でBEENOSはリモートワークに移行して部署間のコミュニケーションが少なくなっていました。様々な部署で発生している課題をヒアリングしていくとコミュニケーション不足が起因となっている問題が発生していることがわかりました。そういった問題を解消したいと思ってアイデアハッカソンを企画しました。今回の開催テーマは業務改善としていますが、実はメインの開催目的は所属や職種を超えたBEENOSメンバーがアイデアを形にすることを通じて新しいコミュニケーションの機会と業務改善や新規事業のきっかけを作るということを目指しました。出てきたプロダクトの評価や作ることだけではなく、コミュニケーションのきっかけを作るということを意識しました。そんな想いを持って、内田さんにサポートをいただきつつボードメンバーに企画の提案をしに行きました。

 ―アイデアハッカソンの企画を提案した時は、どういう反応があったのでしょうか

 内田:
反応は良かったです。そういう企画を待っていた、という感じでした。会社のボードミーティングで提案した際はいくつか指摘はもらいましたが、ものすごくすんなり決まった印象ですね。会社としてはこういう企画を待っていたけど、トップダウンでやるよりも現場から声が上がってイベントを作っていってほしいという思いがあったのかなと思います。

業務改善のための取り組みが、業務時間として認められる体制を死守


―アイデアハッカソンの狙いを教えてください

内田:
アイデアハッカソンの開催についてエンジニア視点で考えたとき、そもそも普段の業務だけで十分忙しいのではないかという予想がありました。業務改善をしようとなってもやりたいとは思いつつ「そんな暇はない」と思ってしまうという現実の問題があります。こういった部分を打開したいという思いがありました。BEENOSのアイデアハッカソンが他社のハッカソンと違うところは 一日2時間までが業務としてカウントされるところです。参加しているメンバーは業務改善という仕事をしているのでちゃんと給料が出る。そうすると帰属意識も上がりますし自分の持っている技術でこんな風に改善できる、というふうに承認欲求が満たされたり自己肯定感があがったりとポジティブな反応があるんじゃないかといった点は狙いとして持っていました。 
 
釜坂:一日2時間までを業務時間にするという点は絶対に死守しようと思っていました。会社を良くする業務をしているのにサービス残業となると「業務改善って何なんだろう」となってしまい誰も取り組んでくれなくなります。アイデアハッカソンというイベントと今後も継続的に開催していくためにも、エンジニアとビジネスサイドが一緒になって主体的に課題解決をしていくムーブメントのきっかけとするためにも、予算をしっかり確保して、業務時間としてカウントするという枠組みを整備することはとても重要だと考えています。何か困ったことがあった時に、外部に改善を依頼するよりも内部のエンジニアに頼んだ方が効率がいいですし、困っている人がいるならぜひ力になりたいと考えているエンジニアがBEENOSにはたくさんいるので、そういったニーズをマッチングするお互いウィンウィンなイベントにできたらと思っていました。


内田:ビジネス側とエンジニア側は最低1人ずついる3人以上でチームを組むレギュレーションにしたのですが、普段関わらない部署のエンジニアとビジネスがクロスするのでどうやって聞いたらいいんだろう、どうやったら伝わるんだろうと試行錯誤していたのは良かったですね。アイデアハッカソンが終わってから懇親会で話を聞いてみると最初は難しかったけど、こういうことを相談してもいいんだと気づいたという声もあり、次につながるきっかけをつかんでもらったんじゃないかと感じています。


ビジネス職とエンジニア職の交流を生んだアイデアハッカソン

釜坂:BEENOSはグループ会社なので普段各社は独立して事業運営をしています。また、コーポレート部門とエンジニア組織もそれほど交流がないと感じています。リモートワークの導入もあり、オフィスフロア間でもあまり関わらない人もいると思います。そこを横断して普通の業務で関わらない人と交流できたのは良いことだと運営として感じています。開催後のアンケートでも、その点を良かったと言ってくれる人が多かったです。

―どのようにアイデアを評価するのでしょうか

内田:
アイデア自体の評価は今回は重視していませんでした。「みんなで悩み事を出し合いましょう」という投稿をSlackで行い、全社から困りごとについて意見を募集しました。そして「自分がリーダーとなってやってみたい」と思う人にそれぞれ意見をピックアップしてもらい、チームビルディングができたチームはそのアイデアを実現していくという形になっています。

釜坂:アイデアの評価は重視しませんでしたが3つの基準は持っていました。1つ目は「業務インパクトの大きさ」です。これは具体的に削減できたコストとか見いだした付加価値ですね。次に「技術力」で、デモの完成度を評価基準にしています。エンジニアは「こんなにすごい技術使いました」というふうになりがちなんですけど動かないと意味がないということに重点を置いてます。動かなかったらだめですよという明確な基準を示しています。そして最後に今回の目的はコミュニケーションだったということもあり「ハッカソンを通じて学んだこと」になります。成果が出なくても学びが多ければ開催した価値はあると思ったのでこの学び度も基準としてました。

―BEENOSらしいと感じたアイデアがあれば教えてください

倉内:
社内で利用している人事管理システムを既存のやり方にとらわれずに自分たちでなんとかできないかと声を上げた点はBEENOSらしいかなと思います。


内田:防災備蓄品に関するアイデアはとてもポジティブなものだったと思います。備蓄品は会社が大きくなればなるほど管理が大変になるけれど従業員のことも考えていきたいという思いがあります。先を見据えて今のうちに何とかしておこうという思いはあるけれど実現できるサービスがない状態でした。この部分はポジティブな思いと業務の課題がうまくマッチングしたと思います。

 釜坂:人事管理システムとスケジュール管理システムのアイデアは僕と森田君で人事の方にヒアリングをして出てきた課題でした。人事の方はエンジニアと関わることってあまりないと思うんです。なので、日々の業務の中で困っていることをヒアリングして吸い上げ、実際に解決策を実行するというのは取り組みとして面白いと感じていました。業務をしていて煩雑だなと思うことがあっても普段エンジニアと関わりがないと、なかなか声って上げにくいと思うんです。何時間も時間を取られているわけでもないけど無駄な仕事というのがあって、そういう部分のニーズをうまく引き出して開発までもって行けたというのは会社全体としてこういった煩雑な業務の課題を解決したいと考えているというメッセージにもなりますしポジティブなものだと思います。

森田:BEENOSらしいアイデアというと少し外れるかもしれませんが、僕自身人事をはじめとして他部署の方とあまり面識がない状態でした。そういった中で釜坂さんが初対面でもどんどん関係づくりをしてプロジェクトを進めていく背中をみてBEENOSらしいアイデアの生みだし方かもしれないと感じました。


―実用化されたアイデアはありますか

釜坂:
アイデアハッカソンで取り上げられたすべてのアイデアを実用化する予定です。事業部から出てきたメルマガに関する開発はすでに動いていますが、それ以外については実用化するまでにまだ時間が足りない問題や完全でない部分の修正があるのでそれらに対応して全社で使えるようにネクストアクションを起こしている最中です。

―ローンチの日程は決まっているのでしょうか

釜坂:
社内向けの問い合わせに対応するBOTが11月中に出る予定です。このほかの開発も前向きに進捗しています。

もっと多くの人を巻き込むイベントへ


―今後のアイデアハッカソンで実現したいことは何でしょうか

釜坂:
端的に言うともっといろんな人を巻き込みたいというのはありますね。今回はビジネス職ではBEENOS Entertainmentから一人で、あとは全員コーポレート部門の人でした。エンジニア以外を巻き込むことには成功しましたが構成にやや偏りが出てしまいました。僕は今tensoに所属しているのですが、その中でも業務改善できることが山ほどあるので周囲の人を巻き込んでやれたらと思っています。それでも今回やる価値は十分にあったと感じています。エンジニアの中でも業務では一切関わることのない後輩と一緒に仕事ができて、ほぼはじめましての状態から仲良くなって実際に業務をお願いしたりする動きも生まれているのでそういう良かった点はありますね。次回開催ではもっと多くの人を巻き込みたいと思います。アイデアハッカソンでこういったことがありました、といろんなところで宣伝したり、エンジニアの定例会や懇親会などで発表しているのですが、いろんな人から「こんなに役立つものを作ってくれるんだったら出たらよかった」という声も非常によく聞いたので次回開催はもっと盛り上がると期待しています。

内田:あとはやりたい形で言うと期末までに実績を作りたいという思いがあって、その実績をもとに次の期はこういう活動をもっとしていかなくてはいけないということを社内的にもアピールしたいという目的はありました。開催時期が期末だから人が集まりにくかったという面は正直あるかなと思っています。期間的にも1か月になると業務調整がしにくいという話も聞いたので、次は一泊二日で合宿みたいな形でノリと勢いでプロダクトを作りきるというやりかたもチャレンジしたいと考えています。

釜坂:開催時期に関してはいろんな意見をもらっているので、現在調整中です。

内田:次は5、6月頃や11月頃が候補になるかと思っています。毎回同じ形式で開催するとマンネリ化するところもあるので、例えば1回は合宿形式、次は1か月間の期間での開催形式にするなどできればいいですね。そうすることで出てくるアイデアや集まるメンバー構成が変わってくるんじゃないかと思います。各事業会社から「うちの課題を解決してほしい」といった形でお題をもらえれば、いろんな形式でいろんな人を巻き込んで困っている人を助けられる社内活動になるんじゃないでしょうか。
 
釜坂:社長の直井さんがよく言っていることなんですが、昔は困ったことがあったらちょっとエンジニアを呼び出して「これどうにかならない」と言うとすぐにプロダクトを作ってくれて、すごい速いスピードで業務改善が進んでいたそうです。そういう文化を継承していきたいという気持ちはありますね。エンジニアも困っている人がいたら助けたいという気持ちはもちろんあるのですが、ビジネス職の人たちもなかなかエンジニアに声をかける機会もないし、何が出来て何が難しいかという判断が難しいというというところもあると思います。
 
内田:エンジニアから見て簡単なことなのに何故対応していないのだろうというところから深く入っていけていなかったり、ビジネス職の人もとても難しいことなんじゃないかと二の足を踏んでしまったり、お互いを知らないことが課題になっていると思います。そのハードルが下がるほど困っている人は減るし、業務効率化できるし、会社の売上や士気に関わってくると思うので、いいサイクルが生み出せるんじゃないかと考えています。 

若手でも声を上げれば実現することが出来るという体験


―運営を通して感じたことなどがあれば教えてください 

釜坂:
大変だったことは全部なんですが(笑)、特に大変だったのは参加者集めでした。誰もがそんなにノリがいいわけではないので、ただ「やりますよ」と言っても誰も来てくれません。なのでSlackで告知をしまくり、一人一人に声をかけ、倉内君にも後輩全員に声をかけてもらったり、声をかけた人からさらに別の人へ声をかけてもらったり、定例で宣伝したりして「来て!」と呼び掛けて地道に広報して、なんとか20名集まったという感じです。やはり一回目の開催なので、運営のぼくら自身もイベントのイメージがついていないし、楽しいのか楽しくないのかをよくわかっていないという。イメージがついていないものを頑張って伝えて参加してもらうのは大変でしたね。また、お金が絡むところで言えば、予算の確保は大変でした。今回のイベントでの作業時間を業務として給与を支払うという枠組みにこだわったのですが、予算を計算してみると結構な金額になっていて、その金額に値する価値のある提案であることをどう伝えようか結構悩みました。社内の課題を実際に目にして実感のある私は、大きな予算をかけてでもイベントを開催する価値があると確信を持っていましたが、それを提案資料でうまく表現するのが大変でした。その点、経験豊富な内田さんからどのようなアプローチをすると経営陣の響くかなど様々なアドバイスと多大なサポートをいただいて、無事に理想の形で開催まで持っていくことができました。今回のイベントを通じて企画から予算を確保して開催まで持っていくという今後の活動に良い経験ができたと感じています。

―参加者集めが大変なんですね

内田:
エンジニアにはイメージのつかないところがあるので、それをどうイメージを持ってもらうかというところとどんなメリットがあるかというところはちゃんと伝えないと参加はしてくれないなと感じました。

釜坂:本当に大変です。全員普段の業務があり、その業務を調整して参加してもらう必要があるので、このイベントの開催がすごく価値があることであるというのを一生懸命説明をして結構強引にエンジニアを集めました。また、業務改善のアイデア自体も自然発生的に出てきたものは正直そこまで多くないです。僕と倉内君、森田くんで様々な部署のメンバー10人くらいにヒアリングをしまくって一週間が潰れるという状態でした。一人一人関係しそうな人に声をかけて「普段ってどんな業務されているんですか」と聞いていってアイデアハッカソンに参加しませんかと声をかけて頑張って集めたというのが本当のところです。いきなり全体に「困っていることないですか」と声をかけてもアイデアを出してもらうのはやっぱり結構難しいですよね。ただ、これは悪いことだとは思っていなくて、なんでも初めてやるときはこんなものなのかなあという感じがしました。この初回を乗り切れたことで次の2回目はもうちょっとスムーズにみんなもイメージをもって進めやすいんじゃないかと期待をしています。実際に成果発表会を見に来てくれた方から「こんなに課題を解決してくれるなら自分も提案すればよかった。次回はいつやるんですか」という声を何人も聞きました。次回の開催がすごく楽しみです。

―学生時代などにこういったイベントに参加されたことはあったのでしょうか

内田:
僕は主催者側をやっていました。社内的にそれでうまくいっている会社もあったので取り入れてみたいなと考えていましたが、前職では企画が通らず断念しました。22年の10月にBEENOSに入社し環境が変わったのでもう一回チャレンジしたいと思いました。

―そもそもみなさん別々の部署ですよね

内田:部署で言うと僕と森田君と倉内君がテクノロジー推進室で釜坂君はtensoで主で携わっているプロダクトは異なります。

釜坂:アイデアハッカソンの運営は出社時にぽろっと話したところから始まりました。テクノロジー推進室の週例でアイデアハッカソンをやりたいので運営を募集します、といったときに倉内君と森田君が手を挙げてくれました。そこから徐々にチームが出来ていった感じです。

―そういった形で進められたんですね

内田:
はじめにがっつり決めてしまうと刺さらなかったとき、失敗した時に身動きが出来なくなってしまってただ辛いことになってしまいます。そうであればゆるくこんな感じでできるかなと始めてフィットする部分はそのまま推進して問題あるところは徐々にブラッシュアップしていけば文化として根付くんじゃないかと思っていました。文化醸造をどうしていくか考えながらミニマムスタートした形です。

釜坂:あと今回いくつか嬉しかったことがあって一つはボードメンバーからすごく良いイベントだったと言っていただいたことです。年間2回実施したいと提案しても「ぜひやってください」という反応でした。最初に提案に行った際に賞金は10万円と提案したのですが、社長の直井さんが「もっと出せば」と言ってくださったり(笑)。初回だったので遠慮しましたが、今回質が高く良いものがたくさん出てきたので、次回の開催の時にはもっと賞金を上げられればなとも思っています。
もう一つは今年の新卒の小川君が参加してくれたんですが、彼は新卒ながらリーダーとしてチームを引っ張り、人をマネジメントし、進捗を管理し、プロダクトの方向性を決めるというPM的なロールを積極的にやってくれました。本人もすごく勉強になったということをいろんなところで発信してくれていています。PM的なロールというのは普段の業務の中ではリスクもありますし難しいと思うんです。それをアイデアハッカソンという取り組みの中で体験してもらってたくさんの学びを得てそれを色んな人へ発信してくれているというのは企画した身としては非常にうれしいなと思っています。小川君は社員総会の時の表彰でも新人賞を取っていたので、僕らも半分くらい貰っていいんじゃないかと思います(笑)。そういったところで全社的に評価してくれるというのは良いことですよね。

―ありがとうございました。