Business 2022.02.07

マーケター出身の事業責任者2名に聞きました P/L責任を持ち、事業グロースを果たす これからの時代のマーケターキャリアとは?【後編】

ブランディアとマンスリーホテルで事業責任者を務めるマーケター対談。前編では、マーケティングの重要性について語り、事業フェーズ別の施策や成長環境について話しましたが、後編ではマーケターの成長、組織づくりや育成にフォーカスします。BEENOSという複数の事業を国内外で展開する環境で2名が得た知見とは?事業を成長させるための強固なチーム作り、組織運営やマーケター育成まで、独自の視点を持つお二人に余すところなく聞いてみました。後編です!
 

地域、国籍、年代層。多岐にわたるサービスの様々なフェーズに携われそれぞれの情報にアクセスできる


―BEENOSグループの中でのマーケターの醍醐味はなんですか。

植松さん:回答が難しいですね。ですが、BEENOSは異なる事業体が集まっている場所なので違う角度から見れますね。ユーザーの動向もそうですし情報の共有なども単一事業でマーケティングをしていても気づけないことがあります。ECという軸でいろいろな角度から地域、国籍、年代層問わずいろんなサービスがある中で、全てが違うそれぞれの情報にアクセスできるのは素晴らしいことだなと感じます。

―グローバルだからこそですね。
 
植松さん:国内海外の違いは今まさに直面しているんですが想像と実際が違いすぎることですね。例えばアメリカのマーケットの流通、だとしたら僕はいわゆる欧米系の方に商品を売っていくんだと考えていたんです。ですが、実態としてはアジア系の方が多いんです。想像と実際を自分で感触を確かめながら事業をやっていくことは難しさもあるんですが、一方で発見や気づき、楽しさがあるんです。これはやってみないとわからない部分ですね。アジア系の方が多いというデータは本にも書いてあるんですが、ビジネスとしてやってみてはじめてその情報が生きてくるんです。

海老澤さん:醍醐味としてはグループ内で新規事業や長年やっているセカイモンのような事業もあるので、いろんなフェーズのマーケティングを全部経験できる点ですね。手を挙げれば経験できるのがいいところです。あとは自分で考えてやる点も魅力だと思います。例えば、マンスリーホテルでいうとユーザーの集客も必要ですが、ホテルの開拓が重要なポイントです。そのためにデジタルマーケと営業のリソースをどう組み合わせるかなどを自分で考えていくんです。toC、toB関わらず幅広くやれるのがBEENOSグループの面白さかなと思います。

―海老澤さんは沢山の事業を見てこられてますね。

海老澤さん:海外の難しさですが、ローカライズが大事だと思っています。顧客にとって海外から商品が発送されることへの不安や怖さなどを取り除くことが新規のお客様獲得につながってきます。お客様が本当に何を求めているのかを考えて、ローカライズは意識すべきだと思いますね。

―ドメスティックなマーケティングだけよりも発見が多いですか?

海老澤さん:そうですね。それはやっていて思いましたね。クロスボーダーのビジネスの中でマーケティングを担ったことで身につく新しい知見や視点ですね。

海老澤さん:ローカライズはクロスボーダーをやる中で必要だったことなので、ユーザーが何を求めているか、数字に表れない裏の部分、そこを意識していかないと人はサービスを利用してくれないんだなということが経験として分かったことがよかったです。


失敗の機会を持てる環境を意図的に創り、マーケターを育成する


―ブランディアのマーケティングチームは他社と比べても使える媒体の幅を含めて非常に成長環境ですよね。

植松さん:そうですね。良くも悪くも自前主義なので代理店さんもほぼ使ってないです。自分たちで直接アカウント開設したりなどしています。マーケティング部の中で1から10までできるというのは強みじゃないでしょうか。 

―チームの特徴は?

植松:ひとつは、通常配属は会社指示で決まると思うんですが、DSTでは本人が希望する部署が選べます。マーケティングを希望すればマーケティング部署に来れるんです。ふたつ目は若いメンバーが多いところです。僕は若い世代のほうがすぐれていると思うんです。若い人たちはTikTokに詳しかったり最近のアプリの使い方を知っていたり活用していたり、もうそこが僕らの世代とは違うんですよね。違いを僕も勉強させてもらいながら実態としてSNSやサービスをどう使っているのかを把握できるのは若いメンバーが多いからです。20~30代の若いメンバーを中心に動いているのが特徴的だと思います。 

―ブランディアはマーケターの育成がうまくいっていますが、後任の育成にあたって必要なことや大切にしていることはなんですか?

植松さん:本人が何を目指して何をやりたいかが一番大事ですね。自分の性格でもそうなんですが嫌なことは嫌なんですよ。やりたくないこととか、将来こういうことがやりたいなとかそこがボヤっとしているとなかなかモチベーションが上がりづらいです。人それぞれ違うんですが、自分で最終的にはWEBサイトを開いてECをやっていきたい人もいればリアルな店舗を出したい人、いろんな考え方があります。自分の目標に対してちゃんと興味を持っているか、それに沿ってマーケティングの業務で新しいことにチャレンジするとき自分の目標とどう結びつけるかが大事ですね。 

―チーム全体のコミュニケーションはどんな感じなんですか?

植松さん:人によっては箸の上げ下げまで指導する人もいます。僕は「決まった枠組みの中で求めているものはこういうもので、アプローチに関しては任せます」という感じです。それぞ視点がみんな違うんです。例えば声優さんをうまく活用できないかとか、こういうものを巻き込めばいいんじゃないかとか発案する人がいて、自分から出てこないものがたくさんあるんですよね。 僕は「ここは任せますよ、どういう角度でもいいですよ」とやっています。そこにその人のちゃんとした裏付けがあって、納得感があって数字のうえでも確度があればどんどん施策をやっていいんです。

―植松さんのお人柄もありますよね。雰囲気等で心がけていることはありますか?

植松さん:ある意味失敗の機会がどれだけあるかですね。イメージは打率1割くらいです(笑)つまり九回失敗してるんです。本の通りに実行してみてうまくいくならいいんですけどやっぱりそうじゃなかったりするので。失敗した時は何故なんだろうと要因をしっかり分析して特定するのがマーケティングの仕事だと思うので、それを持って次にどうトライするかなんです。失敗の機会を持てることは重要ですね。僕はそうした機会を持てるようにどんどん行動を促しています(笑)。メンバーにはどんどんやってほしいですね。


―施策のスクリーニングはどういう体制で実行されているんですか?

植松さん:はじめはすべての施策をチェックしていたんですが、今はマネージャー中心にある程度精査されてるものが僕のところに来ています。数字的な指標はもちろんあるんですけど、しっかりと目的が定まっていて適切なアプローチであればどんどん進めていきます。そこはだいぶ組織立ってやれている部分です。

―海老澤さんが担当されてからの事業成長が目覚ましいと感じているのですが、チーム全体でパフォーマンスを高めるためにどの様な工夫をされていますか?

海老澤さん:僕は社外や業務委託の人と関わることも多いんですが、そこで意識していることは僕らBEENOSの持っているビジョンや目標をコミュニケーションで伝えていくこと。マンスリーホテルを通じてホテルに長期で泊まるという選択肢を世の中に伝えたいのですが、そうした目標やこういう事業をあなたのおかげでこれだけのユーザーが使ってくれていますというところをちゃんと見せていくことを意識しています。フリーランスの方や業務委託の方と一緒に仕事をするとどうしてもアイディアが依頼の範囲内だけで終わってしまうことはどうしてもあって。ですが、相手に期待していることや、こういった世界を創っていきたいというビジョンも含めて情報共有していると、こういったことできませんかとか、うまく壁打ちができるようになると思います。特に業務委託の方と働くときに意識すると非常に有機的に施策を展開できると感じています。
 

変化の早いマーケットに対応するために人員の最適な配置がどうできるか。それをグループ全体でできると組織はもっと強くなる


―BEENOSグループを牽引するお二人ですが、グループのマーケティング組織をどうしていきたいと考えていますか?

植松さん:僕はマーケティングだけでは何もできないと感じています。ブランディアでいうと査定のチームや経理関係の部分やカスタマーサポート、いろんなところとのかかわりが実はあってお客様はそれらをトータルで見てるんですよ。一個の会社のなかだけでDSTはやってきたんですけどグループで見るともっとそれぞれの強みがあったり、そういったところを活かした形で配置ができるのかなと。
極論なんですが組織図を毎日変えたいんです。現実的には難しい問題なんですけど、環境やユーザーはどんどん変わっていくのでそれに合わせてチームも変わっていくべきなんですよね本来。その実現にはいろいろな手続きの面が追い付いていなかったり、メンバーのモチベーションなどの課題があるんですが、本当は毎日変わってもいいと思います。変化するマーケティングへどうやって対応するか、最適な配置がどうできるか。それをグループ全体でできると強い組織になるのではないでしょうか。

海老澤さん:結論から言うと組織を一つに統合したいですね。統合できる部分と統合できない部分があるんですが、広告、SEO、SNSなどの機能的なところに関しては統合できるんじゃないかなと思っています。広告をセカイモンでやっていた人が新しい経験としてBtoBのWEB広告に入ってくることもできるんじゃないでしょうか。成功事例や失敗事例をしっかりと共有することでBEENOSのマーケティング全体のレベルはもっと上がると思っています。 

―今後、どの様な人材を輩出していきたいですか?

植松さん:スペシャリストの輩出は難しいと感じています。やはりいくつかの領域の掛け合わせをしていかなくてはと思っているんです。マーケターにはいろんな業務知識が必要になってくるので、強みをかけわせられる人を輩出したいですね。マーケティングはずっとExcelとにらめっこしているイメージがあると思うんですが、そんなことは全くないです。会社の中、外部で何が起きているかを自分の眼で見にいくことのほうが大事です。そういう感覚をもってExcelに向き合えばいいと思います。それがわかる感覚を持った人を増やしたいと思っています。

海老澤さん:結果を出せるように行動できる人を育てていきたいです。自分自身もそうありたいと思っています。個のスキルだけを特化するのではなく、いろんな事業に関わらないと施策やアイディアなどつかみづらい部分もあるので、様々な部署や人を巻き込みながら施策を考える必要があります。たとえば僕はマンスリーホテル事業をやっていますが、デジタルマーケ周辺を3~4か月やって次に営業にも片足を突っ込んでいる状態です。売上を上げることにどれだけコミットできるか、自分の枠をどれだけ広げられる人が育ってくれるとBEENOSは強くなると思います。

―最後に!お二人とも、相互に今気になることはありますか?きっとそれが世の中のマーケターが知りたいことだと思うので!

海老澤さん:(笑)。植松さんに質問ですがCMをやるにあたって。CPA度外視になったと思うんですけどそこに勝負に行くときの見極め方って何だったんですか?事業がどういうフェーズの時に実行したのかとか。

植松さん:そこに至るまでやりきってることが大事ですね。これ以上ストレッチできないでしょうと誰しも感じていたりとか。それって事業に必要な経営判断ですよね。納得というかそこまでやり切ってるかどうか。手前が一番いいタイミングだと思うんですけど。ここが大事なのかなと思います。事業として必要という話になりますよね。

海老澤さん:やり切った期間があってからのCMに行こう、認知を取りに行こうというフェーズに判断されたということですね。

植松さん:僕たちは運が良かったんですよね。当時宅配買取では競合がいなくて、伸ばせばシェアが取れるという環境だったんです。今はそんなことはないので、ものすごいキャッチアップも早いですし、その中でどういうタイミングで打つかというのも難しくなっていると感じます。周りの状況によりますね。

海老澤さん:なるほど・・

植松さん:僕は、海老澤さんに個別で今の事業のことを状況含めてしっかり聞きたいですね。DMします。

海老澤さん:相談したい施策もあるので、是非。(笑)

―ではそちらは個別で。また勉強会や情報交換などできればと思います、ありがとうございました!

前編はこちらから

Profile プロフィール

 
植松勇人(Hayato Uematsu)
2007年に当社(旧ネットプライス)に新卒で入社後、デファクトスタンダード株式会社に出向。当時はまだ珍しいアパレルリユースDX事業である「ブランディア」にて多岐にわたる業務に従事し、マーケティング領域を中心に買取・販売を拡大し、事業成長に貢献。2008年マーケティング部長、クリエイティブ部長に就任後、2014年12月に取締役に就任。現在はBEENOSグループとして海外販路の拡大など新たな取組を開始。
▶キャリアインタビューはこちら
 
海老澤 佑太(Yuta Ebisawa)
新卒で出版社に入社、広告代理店に転職した後、2014年11月に株式会社ショップエアラインに入社。「海外から日本へ」商品を届ける越境ECサービス「セカイモン」を担当し、マーケティングに従事。web広告、CRM、サービス改善、アライアンス業務を経てマーケティングマネージャーに就任。2019年11月にBeeCruiseに異動し、グループ横断で各事業のweb広告、SEOなどのwebマーケティングのサポートや新規事業のサービス開発支援、営業を行う。2020年8月よりBEENOS Travelのマーケティングマネージャーを兼務し、現在は長期専門OTAサービス、「Monthly Hotel」の事業責任者を務める。